Antipsychotics, Delirium, and Acute Respiratory Distress Syndrome: What Is the Link?
PMID: 29444340 DOI: 10.1002/phar.2093
記事中で気になったところ
低活動型せん妄は認知されずらい。
およそ45%のICU患者は実際には低活動型せん妄を有し、より悪い転機であることは認識されていない。
発症機序は多因性であるが、神経の炎症や脳低還流が原因と考えられている。
炎症は脳血液関門の瓦解・内皮機能不全・脳血流の途絶をもたらす。
ARDSにおいても、低酸素による脳低還流、ARDSの炎症期による神経の炎症が原因と考えられている。
神経伝達物質ドーパミン、セロトニン、ヒスタミン、およびアセチルコリンの循環レベルの変化は、せん妄の患者に起こり、せん妄の病因に関与する主要な神経伝達物質である。
過活動型せん妄の患者ではセロトニン濃度は減少し、一方低活動型せん妄の患者ではセロトニンとドパミンの濃度は上昇している。
ICUせん妄患者に対するクエチアピン投与はせん妄の解消 興奮の軽減 家または施設への転院に寄与する
有意差はないが傾眠、低血圧、QT延長となる傾向がある。
Crit Care Med. 2010 Feb;38(2):419-27. doi: 10.1097/CCM.0b013e3181b9e302.
レトロの解析では、低活動せん妄に対しクエチアピンを投与された患者ではせん妄期間が減少し、人工呼吸器期間も減少傾向だった。
より早期に開始されたほうがせん妄期間も短く、人工呼吸器期間やICU/病院滞在期間も短かった。
Pharmacotherapy. 2015 Aug;35(8):731-9. doi: 10.1002/phar.1619. Epub 2015 Aug 4.
最近のメタアナリシスでは抗精神病薬投与でQT延長やEPS、死亡を増加させることなくせん妄の重症度を改善すると報告された。
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2016 Jul;87(7):767-74. doi: 10.1136/jnnp-2015-311049. Epub 2015 Sep 4.
抗精神病薬の副作用
EPS
過鎮静
ムスカリン受容体アンタゴニズムが強い場合、せん妄を惹起する。
けいれん閾値の低下
高血糖
神経悪性症候群
QT延長
観察研究では死亡率の増加 AKI 低血圧 肺炎 AMIとの関連が示唆されている。
急性呼吸不全との関与も指摘されている。
COPD患者に抗精神病薬を投与した最初の2週間はARFのリスクが66%増加する。
ARFのリスクは容量依存性がある。おそらく治療域での投与ではなくオーバードーズ。
→ARDS患者に対する抗精神病薬投与は呼吸不全を増強・悪化させるかも?
いまのところ、髄質における5-HT活性の低下が上気道筋の機能を低下させ、DA受容体の遮断が気道ジストニアを引き起こして呼吸を困難にすることを示唆している